21世紀の翻訳
翻訳・ローカリゼーション業界での標準化については、これまで数多くの会議が催され、団体が設立され、講義が行われ、学術論文が書かれてきた。これらはすべて確かに必要だし、意味のあることだ。しかし同時に、これらは標準化についての明らかな事実を無視しているように思われる。
業界リーダーが標準化を本気で採用するような動機がない
結局のところ、圧倒的影響力を持つリーダーが業界のオープン標準を受け入れなければ、本物の相互運用性という至高の目標はしばらく夢物語にとどまるだろう。利益追求とオープン化を求める声のバランスをどう取るか、この葛藤は明らかに存在してきた。これまではオープン化の可能性はあまりなかった。選ばれし業界のリーダーたちは、相互運用性と標準準拠を自社製品の魅力として宣伝する一方で、それらを修正し、彼ら言うところの『改良』を行ってきたからだ。結果として、ユーザーのテキスト、用語集、翻訳メモリは、彼らの互換性のないソフトウェアシステム内に閉じ込められてきた。
だが、今は、このような傾向を覆し、相互運用性の新しい課題に取り組む十分な理由がある。
変化を促す5つの要素
これからは、どんな会社であっても、全面的な相互運用性へのコミットメントなしに競争力を保つことはますます難しくなっていく。その理由を以下に挙げる。
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ユーザー意識の向上。ユーザーはもはや中途半端で断片的な標準化サポートを容認しない。そして、意思表示を始めている。
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非相互運用性の高コスト体質が、ネットワークリソース、クラウドコンピューティング、マルチベンダーサービスモデルによって浮き彫りになった。
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TMXやXLIFFなど主要な業界標準に準拠した代替製品・サービスを提供する企業の存在。問題は業界標準の存在ではなく、標準の実装のしかたにある。
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待望の標準化を実行し、改良し、普及するために、相互運用性に関するマニフェストなど業界の新しい戦略がスタートしている。
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そして、超強力な推進力は、接続・連携という時代の精神だ。閉じていた企業が新たなプロフィットプールを開拓するために情報をオープンにする動きが、業界全体にみられるようになっている。
古い対立を超えて
もはや『社会貢献』と『自社の利益追求』の二者択一は存在しない。
今日では社会に貢献すると同時に最終利益を確保することが可能だ。われわれの業界の最も崇高な目的の一つは、間違いなく、世界のコミュニケーションをより効果的に進める支援の提供だ。このミッションを成功させるには、テキスト、用語集、翻訳メモリを、その価値や書式、属性を維持したまま、ツール、翻訳者、プラットフォーム間で自由に行き来させることが必要となる。
TAUSの経験
TAUSデータ協会(TDA)言語データ共有プラットフォームを構築する作業を行いながら、改めて以下のようなことを実感した。それは、物事は細部に予想外の問題が生じたりするということと、標準化はこの細かな問題を解決または回避し、プロセスを効率化する唯一の方法であるということだ。
TDAはTMXとXLIFFという2つの主要標準をベースにしている。320の言語ペアで約30億語がTMX 1.4形式でTDAリポジトリに共有され、保存されている。だが、ユーザーがTMXファイルをダウンロードして自身のエディタで使用する場合は、マッチ率が低くなる可能性もある。これは、翻訳に使用した翻訳ツールのベンダーがTMX標準とは少し異なる仕様を採用したためだ。
この4カ月間、TAUSの開発チームはTDAリポジトリからの直接レバレッジを促進するために懸命に取り組んできた。この新しいマッチングサービスはXLIFF標準をベースにしている。したがって、XLIFF対応ならどんな編集、DTP、翻訳ツールでもTDAデータベースから翻訳一致を得ることができる。
しかし、XLIFF標準の拡張機能を、メタデータのタグ付けの共通方式に準拠するのではなく、自社製品の差別化のために使用する業界リーダーなどがまたもや出現している。準拠を、はなから無視するところさえ現れている。
TAUSの義務を履行
オープン翻訳プラットフォーム、イノベーション、連携、言語データ共有に向けて粘り強い努力を続けるうちに、重大な疑問にたどりついた。それは、サービス企業として成功すると同時に、業界が担う大きな責務を果たし、世界全体に貢献できるだろうかということだ。
可能であるし望ましいことだと、われわれは確信している。そこで、以下の『義務の履行』要請に応えるよう、業界の各関係者に求めたい。
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DTP、業務効率化、CMSシステム 各ツール業界のリーダーは、製品をXLIFF互換にする方法を模索すべきだ。例えば、WordとInDesignに、ファイル >> XLIFFにエクスポートする、という機能があるとしよう。それだけで、制作会社はローカライズに関わるコスト(請求書には通常『技術コスト』と記載)を10%から15%節約できるだろう。彼らの顧客も、自らのローカライズ費用を同様に節約できる。翻訳ツールベンダーにとっては、編集、DTP、CMSシステムのバージョンリリースごとにフィルタを(個別に)開発する投資の必要がなくなるだろう。
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翻訳ツールベンダーは、 TMXやXLIFFなどの標準に完全に準拠した製品をつくってほしい。そうすれば、属性の消失やマッチ率の低下なしに、翻訳メモリをすべての翻訳ツールで使用できる。業界全体で既存の翻訳を再使用できれば、15%から20%の利益が簡単に得られる。結果として翻訳者と顧客の満足度も高まる。
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翻訳メモリの所有者 (翻訳者、翻訳会社、顧客)は、翻訳を共有することで、ある意味それらを『失う』のでは、と心配するのをやめよう。できるものは、TDAリポジトリにアップロードしよう。もちろん、機密情報は引き続き保護すべきである。だが、既に市場に出ている製品やサービスの翻訳は共有したらどうだろうか?もし、きちんと管理された正規の業界プラットフォームを通じて、あなたの翻訳に他の翻訳者や翻訳会社がアクセスできたら、あなたの製品やサービスはより正確に翻訳され、適切にサポートされ、より良く理解されるだろう。そして、販売数も伸びるだろう。世界中の翻訳にアクセスできれば、もっと効果的で迅速な翻訳が可能になる。
全員に訴える。活動する業界と世界に貢献することで自らを助けようと。節約可能なコスト、可能になる翻訳量、私たちの行動から恩恵を受ける人の多さを想像してみよう。当然のことながら、これは業界リーダーも含めての話である。製品やサービスの翻訳、サポート、理解がより向上する。そして、販売数も伸びるだろう。世界の翻訳にアクセスできれば、もっと効果的で迅速な翻訳が可能になる。




